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どうして不定愁訴が生じるのか?
最重要項目は噛み合わせ不正によって生じる顎の偏位を見極めることにあります。
顎の偏位は必然的に、頭蓋骨や頚部の歪みにつながり、さまざまな症状を発症させます。
顎のずれは左右・前後・上下と三次元的に起こりますが、そのずれをまず筋肉・靭帯・腱などの軟組織の矯正から始めます。軟組織のずれが解消することに伴い、第二段階として顎骨・頭蓋骨・頸椎などの硬組織のゆがみを矯正補正してゆきます。
頭蓋骨の歪みの例
頭蓋骨の歪みの例
これらのレントゲン像の頭蓋骨のゆがみは遺伝でも、自然発生的なものでもなく、明らかに噛みあわせが不良だったことに起因しています。
もともと、骨や筋肉の歪みは夜間の無意識下での歯ぎしりやくいしばりといった夜間悪癖によって生じると考えています。この異常習癖は夜間就寝時姿勢時にとる下顎前方位を取るために起こります。
下顎前方位とは難しい言葉ですが、下顎を前に、受け口のような位置にもってくることを意味しています。この位置は呼吸困難の時のように救急蘇生時にとらせる位置です。
長距離を走ったあとは、鼻呼吸だけでは十分な酸素を取り入れることができませんので、口を大きく開け、下顎を前方に動かせて、少しでも多くの酸素を取り込もうとします。マラソンランナーがゴールした直後や激しい運動をしてあえいでいるときには下顎を前に出し、口をあけぜいぜいいっている姿が思い浮かぶものと思います。
この夜間就寝時に起きる異常な下顎前方への運動は昼間時に出せる力とくらべ数倍も大きなエネルギーを持っているため、その破壊力は甚大です。
通常夜間は昼間の約3~4倍の力が発揮されることが知られています。溺れる者が息ができないため、救助者に抱きついて二人とも溺れてしまうことがよく起こります。これは息ができないと、息をしようとする際にあらん限りの力を出せることを意味します。火事場の馬鹿力という表現がぴったりです。
夜間、息がうまくできないと、あらん限りの力を使って呼吸を確保しようします。
無呼吸舌が重力で後退して気道をふさいでいる
下顎を前方へ押し出し下顎を上顎に引っかけ呼吸 ポジションを作る
治療前:気道が狭くなっている
治療後:気道が治療によって広くなっている
このため、できるだけ呼吸しようと行う下顎の運動を邪魔するような歯や歯茎、時には頬や舌のような組織は徐々に破壊されてゆくことになります。毎日何百キロ重の力が繰り返し加わるのですから、徐々にいろいろな問題を引き起こしてきます。
たとえば、歯がかけたり、折れたり、詰め物がはずれたりするのはこの夜間時の噛み合わせ異常から生じると考えています。
しかし、残念ながら、多くの歯医者や一般の方は食事中に噛んだため、このようなことが起こるものと考えますが、実際ほとんど夜間の異常運動によって起こっているのです。このことが歯科治療で誤診や誤った治療が多い原因です。
歯が痛い、しみるので、歯医者に行ったら、歯をたくさん削られ、詰められたり、かぶせられたりされますが、数年後には歯を抜くことになってしまった事例は非常に多いです。
症状があっても真の原因を調べもせず、安易に歯を削ったり、神経を抜いたりする治療が横行しています。噛み癖などがあって噛み合わせが原因で歯に症状が出ている場合、歯を削れば、一時的に噛み合わせが変わりますので、症状は嘘のように消えます。
しかし、悪い噛み合わせが治ったわけではないので、さらにその歯に噛みこむこととなり、その結果、再発もしくは抜歯といった最悪の事態が待ち受けていることになります。
また、歯がぐらぐらになったからといって抜いて入れ歯というケースも臨床ではよくあることですが、これも歯周病を歯周病菌の感染からだけ捉えて治療していることに起因しています。
夜間の下顎の異常運動は毎晩繰り返される結果、口の中だけにとどまらず、口のまわりの組織や器官に悪影響が及んでいきます。頭に及べば、頭痛であり、耳やその付属器官におこれば難聴、耳鳴り、めまいやメニエル氏病、目に起これば、視力障害、めまい、疲れやドライアイとなります。頭から下の方向にいくと、首や肩に及べば、肩こり、首こりや四十(五十)肩であり、もっと下に及べば、背中の痛みに始まり、腰痛、しびれ、膝痛などがあげられます。
首には重要な血管、神経が無数通っており、この部分が歪みによって圧迫されると、血行不良や神経麻痺のような不調が生じてくる。
噛み合わせが悪い場合、左右どちらかの下顎の関節頭が本来あるべき位置より内側あるいは外側へ変位し、いわゆる押し込まれた状態になっています。下顎頭を押し込まれ位置より引き離すことで、種々の症状が改善します。
また、このように噛み合わせの問題は顎のずれを生じさせ、その結果、からだ全体の歪みを引き起こしていきます。からだの左右、前後、上下方向に三次元レベルで歪んでいくと、骨格(骨)や筋肉だけ歪むのではなく、その中を通る血管、リンパや神経などの流れにも大きな影響が出ることが容易に推察できます。ある種の内臓の病気はからだの歪みが原因で起こっている場合も大いにあると思われます。
典型的な側湾症
治療前
かみ合わせ治療後
不定愁訴などの症状などがあり体調が悪く医療機関を受診されたときに、一度や二度、自律神経失調症といわれた経験はないでしょうか?
多くの不定愁訴の症状は自律神経失調症の症状と同じです。噛み合わせの歪みがからだの歪みになり、それが、交感・副交感神経の動きをおかしくすると考えています。
交感神経の働き
交感神経は、別名「昼の神経」と呼ばれ、昼間、活動的なときに活躍する神経です。交感神経が働くと、瞳孔は拡大し、心臓の拍動は速くなり、血管は収縮して血圧を上げ、体は活動できる状態になります。
しかし、自律神経は、体を動かしたり、寒さや暑さなどの物理的な刺激にのみ反応するわけではありません。精神的な刺激に対しても働きます。たとえば強い恐怖を感じたとき、興奮したとき、はげしい怒りを感じたとき、緊張したとき、悩みや不安をかかえているときなども、それらに反応して交感神経が働きます。
副交感神経の働き
一方、副交感神経は「夜の神経」とも呼ばれ、体を緊張から解きほぐし、休息させるように働く神経です。副交感神経が優位になると、瞳孔は収縮し、脈拍はゆっくりとなり、血圧は下降して、体も心も夜の眠りにふさわしい状態になります。
自律神経の働きは、そのときどきの状況に応じて体をうまく適応させることですが、それを具体的にみると、このように交感神経と副交感神経という二つの神経が必要に応じて、ちょうどスイッチを切りかえるようにお互いがうまく切りかわりながら、各器官の働きを調節していることがわかります。そのおかげで、体や心の健康が保たれているのです。
二つの神経のバランスがくずれると自律神経失調症になります
本来このように、昼間は交感神経が働き、夜になると副交感神経が働いて、うまく自律神経のバランスが維持されているため健康が保たれています。
ところが、悩みや心配事をかかえて交感神経の興奮状態がつづいたり、夜ふかしして生活のリズムが乱れ、本来なら副交感神経の働く時間帯に交感神経が働く状態がつづいたりすると、二つの神経の切りかえがうまくいかなくなります。そして、交感神経だけが、極端に偏って働くようになります。つまり自律神経のバランスがくずれるのです。
その結果、ときには活動させ、ときには休息させるという各器官のコントロールがうまくいかなくなり、全身ありとあらゆる器官にさまざまな不定愁訴があらわれてきあます。これが自律神経失調症です。
肩こりがあるからといって、マッサージをうけたら、楽になったという経験をされた方は多いと思いますが、多くの場合、2、3日すると、また凝ってこなかったでしょうか?もし、噛み合わせが原因で、肩こりという不定愁訴が出ている場合、凝っている部位(この場合、肩)だけマッサージを受けても、一時的に血行が良くなり症状が改善しますが、根本的な治療ではありませんので、また症状がぶり返すということになります。対処療法ではなく、根本治療が必要なのです。そこを理解されておられる整体師やカイロプラクティックの先生は歯科の受診をお勧めになられます。