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AMALGAM

アマルガム除去

アマルガム除去について

アマルガムはそもそも水銀と他の金属の合金を意味します。常温で液体である水銀は他の金属と混合しやすく、常温で、水銀の化合物を作り硬化する性質を利用し、歯科でむし歯を削った部位につめる材料として、約200年前よりフランスで使用され始めました。
良い材料だから200年間も使い続けられたという詭弁を弄する歯医者もいますが、硬化したアマルガムからは水銀ガスそして唾液や飲料水などには溶け出し、それが体内に入って健康を害するということは程度の差はありますが、否定できるものではありません。
現在も使用されている国はまだあるものの、全体的には使用頻度は減ってきており、日本でも2016年3月31日をもって健康保険の治療項目からはずされ、国内での製造、供給はなくなっています。しかし、40歳以上の数千万人の歯に、過去に治療としてつめられた歯科用アマルガムは残存しています。

むし歯のつめものとして使用されることはほぼなくなりましたが、今後はすでに歯に残存しているアマルガムをどのように安全に撤去するかが問題になってきています。ここではアマルガムを安全に撤去することについて記述いたします。

アマルガムの中の水銀の種類

アマルガムの危険性については、販売していた当時の製品(下の写真)に添付されていた文書(下の写真)を読むだけでいかに危険なものであるかがわかります。
素手で触ってもいけない物、できるだけ厳重に保管しないといけない物をどうして患者さんの口に入れていたか、今から考えると不思議です。

  • アマルガムの製品
    (写真中の右は水銀)

  • アマルガム製品に同梱されている添付文書

水銀の種類

まず、アマルガムの危険性を論じる前に、水銀の毒性を知っておかなくてはなりません。
水銀は状態によってさまざまな形になって存在します。

  • 元素水銀(Hg):液体や気体として存在しています。
  • 無機水銀:歯科用アマルガムから血液や唾液に溶出して無機水銀として存在します。
  • 有機水銀:大型魚を食べることで、供給されますが、歯科アマルガムが腸内で腸内細菌などによって変化する場合もあります。

エチル水銀:三種混合ワクチン、インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンなどのワクチンに入っているチメロサールは生体に入ると、有機水銀の一種であるエチル水銀とチオサリチレートに分解されます。このエチル水銀に毒性があると疑われています。)

このことから、アマルガム中の水銀はもともと元素水銀として気体となって放出したり、唾液などの液体に無機水銀として溶出したりしますが、その一部は腸内にて無機水銀から有機水銀に変化します。よって歯科アマルガムからの気化物あるいは溶出物は無機水銀でも、体内において有機水銀に変わる可能性があり、歯科用アマルガムは安全とは断言できません。

よって、歯科アマルガムから放出される水銀は無機水銀だから安全というのは水銀の生体内の動態を考えない間違った考え方と言えます。この誤った考え方に同意される場合、以下の「アマルガムの安全な除去について」の記述をお読みになる必要はありません。

体内での水銀排出経路

  • 金属水銀として溶出→全身の細胞に蓄積→生体への排毒
  • 腸管内で有機水銀→肝臓→胆管→腸→便
  • 腎臓→尿
  • 金属水銀として気化→肺から体内へ→全身の細胞に蓄積→生体の排毒?
  • 体内移動中に→有機水銀→肝臓→胆管→腸→便
  • 腎臓→尿

通常健康な方は体内にもともと備わっている解毒機能により、便や尿から排出されますが、解毒機能が低下あるいは消失している場合、水銀は体内のさまざまな臓器に蓄積し、水銀の悪影響が出てくることになります。
アマルガムがたくさんお口の歯につめられている方でも症状もなく元気な方もおられる一方、1本でも体調を崩されている方も多くおられます。その差はその方に本来備わっている解毒してそれを排出できる能力が十分に機能しているかどうかの差です。

アマルガムの問題

アマルガムから遊離した水銀は体内に取り込まれると、以下を標的に悪影響を及ぼしていきます。

脳・肝臓・心臓・腎臓・心臓・脳下垂体・甲状腺・腺体

その他にも以下のことなどを起こすことが報告されています。

  • 免疫抑制
  • Th1→Th2に示すフードアレルギー、各種過敏症
  • ハプテン形成と自己免疫疾患

水銀の有する毒性によるさまざまな症状や不定愁訴は神経細胞障害、細胞内のミトコンドリア活性低下、さまざまな生体内の代謝酵素、消化酵素の阻害、ミネラル輸送障害や低酸素症などに起因すると考えられています。いかにその代表的な症状を列記します。

  • 口腔の症状

    • 口がひりひりする
    • 舌の違和感
    • 口内炎
    • 唾液が出すぎたり、乾燥したりする
    • 歯痛
    • 歯茎が腫れる
    • 白板症がある
    • 顎が痛い
    • アデノイド
    • 外骨症、骨隆起
    • 歯ぎしり、喰いしばり
    • 歯周病
    • メタルタトゥー
    • 口臭
    • 金属味 など
  • 神経症状

    • めまい
    • 頭痛、偏頭痛
    • 疲労感
    • 眠気、朦朧とした状態
    • 睡眠障害
    • 震え
    • 麻痺、しびれ
    • 手足の冷え、悪寒
    • 味覚障害
    • 記憶障害
    • うつ
    • 精神状態悪化 など
  • 消化器症状

    • 便秘
    • 下痢
    • 腹痛
    • 胃酸過多、胸やけ
    • 膨満感
    • 腹部けいれん など
  • 筋肉や関節の症状

    • 腰痛
    • 背中の痛み
    • 首や肩の痛み
    • 膝の痛み
    • 足や膝の痛み
    • 肩や首の痛み など
  • 皮膚症状

    • 肌荒れ
    • 発疹
    • かゆみ
    • 皮膚炎
    • にきび など
  • 循環器系の症状

    • 血圧の変動が大きい
    • 不整脈がある
    • 胸の圧迫感や痛み など
  • 呼吸器系の症状

    • 呼吸困難がある
    • 肺気腫
    • 呼吸が不規則 など
  • 免疫系の症状

    • かぜをひきやすい
    • アレルギーがある
    • 副鼻腔炎(蓄膿)がある
    • 鼻炎がある
    • リンパ節の腫脹
    • むくみがある など
  • 視覚と聴覚の症状

    • 物が二重にみえる
    • 目の奥の圧迫感
    • 目が乾く
    • 蛍光灯の光に敏感
    • 耳鳴り
    • 雑音 など
  • その他の症状

    • 食欲減退
    • 脱毛
    • 月経異常
    • 甲状腺疾患がある
    • 電磁波に過敏 など

アマルガムの診断

歯の治療にアマルガムが使用されているのかを調べることが重要です。

むし歯の治療のためにつめてある状態の場合、歯科医師がみればほとんどの場合、アマルガムだとわかりますが、一部、アマルガム以外の銀色の合金との鑑別が困難なときがあります。

その場合、写真のような水銀ガスメーターを用いて、疑わしい銀色のつめものの表面の近くにメーターの検査ノズルを近づけてみると、アマルガムでしたら水銀ガスが出ていますので、水銀ガスメーターで確認することが可能です。

このようにアマルガムかどうかの確定診断は調べる銀色のつめものなどから、水銀ガスが放出されているかどうかで調べて決定します。

しかし、以下のように、アマルガムが歯の中奥深くにある場合、その存在を簡単に検出できません。

むし歯の治療で神経をとった後に、根の中にアマルガムをつめ、土台を作り、その上にかぶせ(クラウン)をすると、アマルガムはクラウンの中にあり、レントゲンでも見つけることができない場合があります。
クラウンをはずすと、中からアマルガムが出てきた経験はたいていの歯科医師なら経験しています。

むし歯の治療でアマルガム処置をされた歯が、数年から数十年後、再度むし歯になってしまった場合、基本的にはつめてあったアマルガムをすべて撤去しますが、一部の歯医者で、すべてを取らず、アマルガムの上の(浅い)部分だけを削り、下の(深い)部分は触らず残して、その上に別の銀歯などで詰め治すことがあります。

神経を取った後に、歯の根の先端部分に問題がある場合、通常は根の治療で、歯の頭(歯冠)の方から治療していきますが、何らかの理由でそれができない場合、歯肉を切ってあけ、根の先端の悪い部分を切り落とす逆根管充填法という治療法があります。
この歯の根を切り落とした根の先端に根管を封鎖するためにアマルガムを使う方法が昔よく行われていましたが、その場合、歯の先端につまっていますので、お口の中の視診だけでは判断が困難です。ただ、レントゲン写真で確認できることが多いです。

アマルガムの除去時期

銀色のつめものが、アマルガムだと診断できても直ちに除去してよいかは、さらに各種検査による検討が必要です。
アマルガムを除去する時期は以下の状態を考慮して決定します。けしてアマルガムは毒性があるので、すぐに撤去するというのは間違った方法です。
撤去するべき時期を誤った場合、状態によっては重篤な症状(ダイオフ症状といいます)が現れる場合があります。

慢性炎症はできるだけ治癒させます

歯周病、根尖病巣や上咽頭炎などの三大病巣以外にも、慢性副鼻腔炎や腸管の炎症はできるだけ消失あるいは消退させておかないと、元の疾患が悪化する可能性があります。
慢性炎症の治癒をしらべる直接指標はありませんが、血液検査をして、CRP値、γグロブリン値やフェリチン値、シュウ酸値で間接的にみることが可能です。

とりわけ腸内環境は改善しておく必要があります

アマルガム除去の最終目標は体内から水銀をはじめ有害重金属の体外への排出を自然に行わせることです。アマルガムだけ除去しても、体内のさまざまな臓器の細胞内には水銀など重金属が蓄積しています。
アマルガムという水銀の供給源がなくなっても、水銀はまだ体内に残っているといますので、残っている重金属が体外に排出しやすい状態にするため、腸内環境を整えておく必要があると思われます。たとえば、便秘ですと、いったん便中に排出された重金属などの毒物が大腸内に滞留している間に再吸収されてしまいます。
これでは水銀など重金属の所在地が変わっただけで、毒物の体内移動を促しているにすぎません。このような場合も、解毒(デトックス)はうまくいきません。
腸内環境の改善について調べるには総合便検査などがありますが、問診によるチェックが比較的正確で、しかも安価です。

カンジダ菌の除菌を優先します

カンジダ菌という真菌は水銀を貯めこむ性質があり、カンジダ菌を除菌するために、抗真菌薬や強い抗菌薬を用いますと、腸管内に生息していたカンジダ菌が死滅しますが、その際にカンジダ菌体内に蓄積していた水銀などの重金属を一瞬にして腸管内に放出され、重篤な症状(ダイオフといいます)を起こさせることがあります。
よってカンジダ菌の除菌はカンジダ菌の有無の検査からはじめ、穏やかにカンジダ菌を減らしていく治療が必要です。
よって腸管内にカンジダ菌がわいているからといって、アマルガムなどのチェックあるいは体内の重金属の動態を調べないで、いきなりカンジダ菌を死滅させるような方法は非常に危険です。
カンジダ菌が除菌されたかどうか有機酸検査、総合便検査などでチェックをおすすめします。

重金属を排出できる能力があるのか確認が必要です

アマルガムを除去したとしても体内には依然、水銀など重金属が蓄積しています。
健康な方は体内に備わっている解毒能力により、重金属は自然に排出されますが、解毒能力の低下している方はそれができません。体内に蓄積している重金属による弊害はそのまま続くことになります。
よって、重金属などの毒物をどの程度解毒排出できるのかを調べることをお勧めします。この解毒機能が無いまま、アマルガム除去を行うべきではないと思います。
重金属を解毒、排毒できる機能は毛髪ミネラル検査である程度推測できますが、より正確に調べるにはトリマーキュリーテスト(下記参照)が効果的です。ぜひ、アマルガム除去前に調べてみられることをお勧めしています。
トリマーキュリーテストは現在体内に蓄積している水銀量を有機水銀と無機水銀に分けて測定、表示することが可能です。さらに、有機、無機それぞれの水銀の排泄する力も併せて表示してくれます。

トリマーキュリーテストの結果の一例
(この方は有機水銀の蓄積が多く、しかも体内からの水銀の排泄能力が低いことがわかります)

アマルガムを安全に撤去するには最低限、上記のことに配慮しながら、アマルガム除去の時期を決定しないといけません。
アマルガムのように重金属の蓄積がある方は、副腎疲労、腸内環境の悪化、甲状腺機能異常を併発している場合が多くみられますので、これらの疾患を治癒させることも重要です。
よって歯科医院に飛び込んで、ただ単にアマルガムを除去することだけは避けていただきたいと思います。

アマルガムの除去方法

  1. Flow01

    術前に適切なサプリメントを服用してもらいます。

  2. Flow02

    高濃度ビタミン点滴を開始します。

  3. Flow03

    除去する患歯の周囲に浸潤麻酔を行います。

  4. Flow04

    患者さんの顔面や体部を全身ドレープにておおいます。
    患者さんの顔、からだの露出がないようすべて覆います。

  5. Flow05

    患歯にラバーダムを装着します。
    アマルガムを撤去する歯のみ露出させます。

  6. Flow06

    術者が防護服に着替え、防護マスクを装着します。

  7. Flow07

    口腔外バキュームを患歯の近くにセットします。切削時にまき散らされるアマルガムの微小削片を効率よく回収します。

  8. Flow08

    アマルガムの除去をタービン・ハンドピースにて行います。

  9. Flow09

    拡大鏡あるいはマイクロスコープを用いてアマルガムの取り残しがないかを調べます。

  10. Flow10

    キレート剤を用いて、残存水銀の洗浄を行います。

  11. Flow11

    グラスアイオノマーセメントを削った窩洞に充填します。後日、問題が認めなければ、最終修復を行います。

  12. Flow12

    点滴の終了とともに、患者ならびに術者の防護ドレープや防護服などを撤去し、ラバーダム、グローブとともに汚染物として処分します。

  13. Flow13

    咬合(かみあわせ)をチェックして、問題なければ含嗽してもらいます。

  14. Flow14

    退室していただきます。

  15. Flow15

    術後の注意・指導を行います。

  16. Flow16

    必要な場合、術後のサプリメントを服用していただきます。

  17. Flow17

    すべて問題なければご帰宅いただきます。

アマルガム除去後の注意点

アマルガムを歯からすべてを撤去しても何も変わらない方も少なからずおられます。
その原因の一つに、アマルガムの体内蓄積があげられます。確かに歯につめられたアマルガムは大量の水銀を体内に供給していましたが、もう一つの水銀の供給源を見落としがちです。
それは食事からの水銀の侵入と、アマルガムがつめられてから、撤去されるまでの長期間、アマルガムから遊離した水銀を体内のどこかに蓄積して、そこかが供給源になっている場合の2つが考えられます。
よって、マグロ、クジラといった大型魚をはじめ魚からの水銀侵入を考えますと、ある期間は魚の摂取は控えた方がよろしいと思われます。
また、アマルガム除去後でも、体内に蓄積した水銀などの重金属はデトックスという方法を使用して、積極的に重金属を排毒させる方法があります。

アマルガム除去の費用

当院ではアマルガムの有無などを視診やレントゲン検査で調べる場合、健康保険で行っていますが、アマルガム除去は自費治療となります。
その他、トリマーキュリーテストや腸内環境などのアマルガム除去に付随して必要な検査費用が別途必要な場合があります。

1回の除去の基本料金 30,000円
撤去するアマルガムの箇所が増加ごとに 10,000円の加算

※税込の金額です。

アマルガム除去の期間・回数

  • 治療期間:1日
  • 治療回数:1回

最後にお伝えしておきたいこと

アマルガムは体内のさまざまな代謝反応を狂わせ、病的な状態にしてゆく毒物です。水俣病に代表されるように、水銀は体内に入って蓄積した最悪の状態を引き起こします。

アマルガムの使用は日本では近年激減しており、2016年3月末をもって健康保険からもはずされた歯科材料です。つめてから短期間のみ経過しているケースは少なく、40代以上の方が子供の時につめられたものがほとんどです。
このため、アマルガムがつめられてから数十年経過している場合が多く、アマルガムからの水銀は歯だけでなく、からだのいたるところの臓器、細胞内に奥深く蓄積している可能性があります。

よって、毒物だからといってむやみに撤去するのではなく、からだに負担のないように撤去をお願いしたいと思います。

健康な方はアマルガムが歯に入っていても、ご自身の有する解毒、排毒機能により水銀は体外へ排出されますので、その見極めも必要かと思います。むやみに外さない方が良い場合もみられます。

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